AAC2010 最優秀賞・副賞 美術旅行レポート

作品タイトル:「 A.S.series 『第二の扉』」
宮原 嵩広(みやはら たかひろ)
東京芸術大学大学院 美術研究科
韓国 美術旅行レポート

今回私は韓国に行くことにした。
私が興味を持つ「現代アート」が、韓国ではどのような扱いや展開をされているのか、ジャンルに囚われず、ギャラリーを中心に巡りながら考察する旅にしようと思う。

インサドン

ソウル周辺でも、伝統工芸や文化の街であるインサドンキルというメインストリートと、その脇道に骨董品店や古美術店、ギャラリーが点在している。
カフェやお土産店もあり、若者や観光客で賑わっている。
ギャラリーを何か所か観て感じたことは、老舗なのか、保守的な作品が多い印象。
比較的新しそうなギャラリーでは学生のグループ展などをやっていて、感性を刺激する写真の作品に出会えた。

プクチョン

プクチョンは学校が近いため学生向けのお店が多く、その中にギャラリーが点在している。
インサドンより現代アートを扱うギャラリーが多い印象。
プクチョンにはアートソンジェセンターという美術館もあり、企画展は日本の漫画を紹介する「マンガ」展が行われていた。

何軒かあるギャラリーの中でも、ARARIOギャラリーでのInsaneParkさんの「M.IDEA」展は、少し考えさせられる内容の展示で面白かった。
作品は、タイトルになっている「M.IDEA(MEDIA+IDEA)」その言葉の通り。
展示内容は、MEDIAをモチーフあるいは素材として、そこに作家自身または歴史的美術史的な背景をIDEAとして投入している。
例えば、キャンバスの代わりに電気ケーブルを何本も張った物に、アナログ映像の様に加工された人物がケーブルを削ることで浮き上がってくる。その被写体は、誰しもがその映像を目に焼き付けているハリウッドスターやミュージシャンなど。これはウォーホルに影響を受けていると思われるが、テレビというアナログ時代最大のメディアとその時代最大のイデアの様な存在の融合は、ポップアートとして成り立たせているのではないだろうか。
かと思うと、不特定の一般人を犯罪者の写真(モンタージュ写真や指名手配の写真など)の様に加工されてたものを描いていて、TVという最大のメディアが大衆に与える影響を示唆する作品になっている。
このシリーズの他にすごく気に入ったのは、下の写真の右の作品。これこそ今の朝鮮半島を浮き彫りにしている作品ではないだろうか。


国立現代美術館

ソウルの南クヮチョン、ソウル大公園の近くにある国立現代美術館。
館内に入るとまず目に飛び込んでくるのは、ナムジュンパイクとカンイクジュンが、1994年にホイットニー美術館で発表した二人展、〈マルチプル/ダイアログ∞〉の常設展示。私が見に行った時はモニターや音響がついておらず、非常に残念だった。

企画展は、「MADE IN POP LAND」と題して、韓国、日本、中国などアジアの現代アートを集めた展示。
日本の作家も小谷元彦、会田誠、村上隆、森村泰昌、ヤノベケンジ、奈良美智、福田美蘭などが参加していた。
内容は、マスメディアと大量消費社会、スペクタクルなイメージがうねる現代社会において氾濫するイメージを再脈絡化させ、それに符合するPOPアートがどのような役割をするべきか、とのこと。
展覧会は以下の4部で構成されている。
「大衆」「スペクタクル」「抑圧されたものの帰還」「他人の苦痛」
アジア大衆を生きていくものと、POPアートをあわせる場、としての展覧会のようだ。中国人作家であろう作品には、かなり驚かされるものが多かった印象。韓国人作家の作品は美術史からの考察がみられるが、それをやってしまうか!と思うぐらい美術史に忠実というか・・・。
その中でも面白い作品も多々あり、一つの場でアジアの現代アートをみれた感じがすごくよかった。
残念だったのは図録がなかったこと。これだけの作品が集まっているのにもったいないと感じた。

常設展は西洋彫刻や絵画が多い印象だが、現代アートもぼちぼちあり、日本の美術館にも見習ってほしいところ。

野外彫刻も数が多く、李禹煥を中心にもの派の作品が展示されている。

サムチョンドン

丘の上には昔からの韓国屋が並んだオシャレな街並みだが、主要のギャラリーが閉まっていたため移動することに。
観光であればもっとゆっくりしていたい場所である。

チョンロ

ここのギャラリーは、日本でも聞いたことのあるギャラリーが多く集まっていると思います。
クッチェギャラリーやギャラリークモ、ギャラリーゲンダイ、ギャラリーサンなどなど。
残念ながらここもほとんどが閉まっていた。ギャラリーめぐりはなかなか難しい・・・。

ソウル市立美術館

シャガール展がやっていることを知り、どういった場所なのかを見たくて立ち寄ってみた。
日本と同様に人気があるようで、行列ができていた。韓国も日本と同じような美術教育が行われているのだなという印象。

ここではシャガールの他に「イメージのスキマ」という展示もやっていた。
イメージという曖昧なものを具現化された作品が、まさにイメージのスキマを突いた展示になっています。

トクスグン

ソウル市内にある古宮で、その中の一つを国立現代美術館が改装し、トクスグン美術館になったそうだ。
そこではピカソ展をやっていたが、展示というよりも、この場所の光景に感動した。
何百年も前からあったであろう場所、それを囲う塀の上から高層ビルが立ち並び、異様な空間になっている。
韓国でもこの景観には賛否両論あるらしいが、今韓国が抱えている問題を、日本も同じ様に考えさせられるいい場所だと思う。

チョンダンドン

大きい道路に面した、海外にも拠点を持つ大きめのギャラリー。
また、その側道を入った所には、大小様々なギャラリーが点在していた。
このあたりのギャラリーも開いている所が少なく、聞けばアートフェアに出展をしているらしい。
近そうなので、行ってみることに。

COEX

日本でいう国際フォーラムのような場所だろうか。
ここに、ソウル周辺の古美術系からコンテンポラリー系まで様々なギャラリーが集まっていた。
日本のアートフェア同様、何かやってやろうという意欲的なギャラリーは発見できなかったが、日本には無い表現を、一度に沢山観れたのは勉強になった。

タルマジ

プサンの南に海に面した丘があり、以前はたくさんのギャラリーがあったのだが、現在は数えるほどしか残っておらず、カフェなどに姿を変えていたのが残念。
しかし、海が綺麗で夏に来たら楽しそうなところだ。
秋には、BEXCOという場所や、海岸、市立美術館で「プサンビエンナーレ」が行われ、賑やかになるそうだ。

プサン市立美術館

エントランスには、日本のギャラリーなどでも見かけるリ・ゼヒョウさんの作品が常設されていた。
企画展は、個人的におもしろいと思うものはやっていなかった。

ヘイリ芸術村

ヘイリが位置するのは、パジュという韓国と北朝鮮が分断された軍事境界線に近い、歴史的な場所。
そこで平和と統一、繁栄の地として再興し、様々な分野のアーティストや芸術愛好家たちが集まり開かれたスペースとして、15年前に完成。
ソウルから電車とバスで行く事ができるが、結構厳しい。バスは乗り継がなければならないし、慣れていないと辿りつけないかもしれない…。車で行けたら楽だろうなという感じ。ゲストハウスがあり、滞在することも可能。
もし行くのであれば、ギャラリーやカフェがやっている土日がお勧め。特にプサンビエンナーレやソウルアートフェアがやっている秋は、アーティストなども集まり賑わうようだ。
基本的にカフェとギャラリーが一緒になっていて、ギャラリーは場所によっては入場料がかかる場合があるが、カフェでお茶などをすれば入場無料になる。しかし有料のギャラリーの数は少ないので、休憩をする時に入れば、ちょうど良いのではないだろうか。
日本橋にもあるクムサンギャラリーは、本店がヘイリにある。

普段から屋外に多くの作品が常設されている。


今回の韓国美術旅行を通して私が感じたことは、初めて海外で美術をちゃんと観たということもあり、日本の美術との違いを実感できて、非常に良い刺激になったということです。
今回はギャラリーを中心に見てまわりましたが、日本同様、週単位などで展示が変わったり、休日であったりと、なかなか短期間で全てを観ることは難しかったです。
作品を観て感じた事は、まだまだ北と南に分断されている現状もあり、戦争というものが垣間見え、なんとも言えない感情がこみあげました。
日本人として考えさせられ、勉強になる旅となりました。