第9回AAC学生彫刻コンペ 審査結果

「アートのあるライフスタイル」の提案とともに、若手アーティストの発掘・支援・育成を目指して実施している学生限定立体アートコンペ「ART MEETS ARCHITECTURE COMPETITION(AAC)」の最終審査会を、2009年10月23日、神奈川県川崎市の「アルティス武蔵小杉(アジールコート武蔵小杉)」で開催いたしました。
今回で9回目を迎える本コンペは、同年6月から8月までの約2ヶ月間、全国の美術を学ぶ学生から作品を募集。
36点の高レベルな作品が集まった一次審査会で選出された3名が、展示場所となる「アルティス武蔵小杉(アジールコート武蔵小杉)」のエントランスホールに、実制作した作品を1点ずつ仮設置してプレゼンテーションを行いました。厳正な審査の結果、以下のように受賞作品が決定いたしましたのでご紹介します。

最優秀賞


作品タイトル: 「天上の虹」
八木 貴史(やぎ たかふみ)
武蔵野美術大学大学院 造形研究科 美術専攻彫刻コース
■ 八木 貴史さんのコメント
私達作家は、何週間も何ヶ月もかけて作品を作るのですが、発表してもそのまま作家の倉庫行きになってしまう作品もあります。
この作品はこの場所に置かれ続けることになり、私も嬉しいですし、この作品にとっても幸せなことだと思います。
それに、この作品はこの場所のために制作したものなので、ここに置かれることで初めて完成します。
作家として、作品を完成させることができて嬉しいです。
ありがとうございました。
■ 最終設置作品
作家の強い希望もあり、最終審査の後、作家と審査員、主催会社で協議の結果、台座と作品の高さが変更になりました。

(審査時の作品の高さは2.0メートルでしたが、最終設置作品は3.6メートルに変更)
■ 審査員長コメント / 小池 一子 氏
八木さんの作品は、誰もが小さい時から一度は触れている、色鉛筆という非常に身近な素材で、ひとつの作品を構築していらっしゃいました。
これは円柱で立ち上がっていくものなのですが、まず素材を角材にしてそしてそこからまた造形をしたというプロセスで作っていきます。
サイトスペシフィックという言葉をご存知かと思いますが、審査の課程で八木さんはその場でなければならないということを非常に考えていらっしゃるのが解りました。
応募作品としてはひとつ完成しているんですが、この空間に対してはまだ発展させる余地もあるのだと、考えていらっしゃるので結果に期待します。

優秀賞


作品タイトル: 「うずくまる」
片井 彩霞(かたい あやか)
九州産業大学大学院 芸術学部 芸術専攻科
■ 片井 彩霞さんのコメント
この度は、この様な賞、そして発表の機会を与えていただき、大変感謝しています。
公共のスペースに展示する作品を作るということ、そして、その空間に作品を展示し、プレゼンテーションを行い、審査をしていただくということは、初めての経験で多くの戸惑いや不安がありましたが、それと同時に喜びも多く、とても勉強になりました。
また、私は日頃、九州で制作活動をしており、他の美術系の学生の活動をみる機会もあまりないので、とてもいい刺激を受けることができました。
今回、学んだことを糧に作品を創り続けていきたいと思います。
ありがとうございました。
■ 審査員長コメント / 小池 一子 氏
片井さんの作品はテラコッタで、小さなものから大きなものの細胞が集まった、柔らかい円形の作品です。
最初のプレゼンテーションでは台座が黒だったのですが、それがベージュとピンクの間の様な綺麗な色に変わり、母の胎内にいたという思いを起点にした、温かい作品になっていました。

作品タイトル: 「立つこと」
本郷 芳哉(ほんごう よしや)
東京藝術大学 美術学部 彫刻科 研究生
■ 本郷 芳哉さんのコメント
この度の機会を通して、自分の制作だけでは見えてくることのなかった部分を見ることができました。そして、そこから大変多くのことを学べたように思います。
また、授賞式・懇親会で審査員の先生方や受賞者の方々と直接お話できたことも非常に勉強になりました。特に審査員の先生方には過去の作品資料にまでご意見をいただくことができ、今後の活動について考えていく中での多くのヒントを頂けたように思います。このような機会をいただき感謝しています。
■ 審査員長コメント / 小池 一子 氏
本郷さんの作品はステンレスで、非常に有機的な形態を創出していらっしゃいます。
1次審査の際のドローイングで見た時と、今日その場で見た時とでは、光の反射がよく見え、実作は効果をあげています。

プレゼンテーション・審査風景

AAC2009総評

■ 小池 一子 氏 / 審査員長 クリエイティブディレクター
一回目に審査員が顏を合わせましたのは、8月のまだ暑い時でした。
そこで沢山の応募をいただいた中から、実際の空間でどのように考えられるかということを予想して、3つの作品を選びました。
そして今日この秋晴れの日に、実際に展示される武蔵小杉のマンションで、ご本人にプレゼンテーションをしていただきました。本当に良い方々3人を選ぶことが出来て良かったと思う、幸せな時間でした。

3人の方のプレゼンテーションをうけ、質問をさせていただき、それぞれの作家が意図してらっしゃったことを私達がくみとって審査をいたしました。優秀賞を取られた八木さんの作品は、色彩が楚々としていて、エントランスの空間に良い収まりを見せるだろうというイメージを審査員一同が持ち、最優秀賞となりました。

私はこういったコンペを審査するのは初めてなんですが、日本の空間の中にアートを入れていくということはいくつか経験を重ねています。
たまたま前日、「高松宮殿下記念世界文化賞」という大きな祝典があったのですが、その受賞者はそれぞれ、空間に対してどのようにアートが入っていくかということを考えていらっしゃる大作家たちでした。
受賞者の一人である、リチャード・ロングが、有楽町の国際フォーラムの中庭に作品を出したとき、私は審査員長を努めさせていただきました。
そのときのお話で、私は同席できなかったのですが、ディレクターのチームが、彼のイギリスの家にいって、お昼ご飯をごちそうになったそうです。
大きな楕円形のお皿にジャガイモが盛られていて、そのじゃがいもを半分に切って置いた彼は
「今度の作品はこういう感じになります」と言ったそうです。
私はそれを聞いて、素敵だなと思ったんですね。
アートの創作をしたりデザインをしたりすることは、とても特別なことなのだけれども、人間の生活に密着したものでもあって、大きな彫刻家がそういうプレゼンテーションをしてくれたことにすごく感動したのを覚えています。
みなさん現在はご自分の方向を極めているところだと思います。その中で、人間の生活の原点みたいなものを思っていただきたいと思います。
大きな芸術家がこの中から巣立っていくのを願っています。

最終審査結果発表
表彰式・授賞式
表彰式・授賞式 AAC2009
表彰式・授賞式 AACポスターコンペ2009
懇親会