第13回 学生立体アートコンペ「AAC2013」 審査結果

「アートのあるライフスタイル」の提案とともに、若手アーティストの発掘・支援・育成を目指して実施している学生限定立体アートコンペ「ART MEETS ARCHITECTURE COMPETITION(AAC)」の最終審査会を、2013年12月16日、東京都太田区の「京急蒲田プロジェクト(ステージグランデ蒲田アジールコート)」で開催いたしました。
今回で13回目を迎える本コンペは、同年5月から8月までの約3ヶ月間、全国の美術を学ぶ学生から作品を募集。
56点のハイレベルな作品が集まった一次審査会で選出された3名が、展示場所となる「京急蒲田プロジェクト(ステージグランデ蒲田アジールコート)」のエントランスホールに、実制作した作品を1点ずつ仮設置してプレゼンテーションを行いました。厳正な審査の結果、以下のように受賞作品が決定いたしましたのでご紹介します。

最優秀賞

「eternal moment」
村上 仁美(むらかみ ひとみ)さん
愛知県立芸術大学大学院
美術研究科 彫刻領域

■村上 仁美さんのコメント
今回はパブリックなスペースに置く作品を制作させていただきました。
そこに住む人々の毎日が、豊かで特別なものになるように願いを込めて、めまぐるしく過ぎていく日々の中で永遠に続く命の営みや、その儚さを表現しました。
それがこのような形で評価されたこと、これから多くの人の生活の場に寄り添っていけることを大変嬉しく、光栄に思います。
これを励みに、今後ますます精力的に学び、作品制作を続けていきたいです。
ありがとうございました。

■ 審査員コメント
圧倒的に興味を持ったのが、色です。
作品は丸い形ですが、そこにツタや花などそういったものが、絵の具でも出ない、とても繊細な色が出ています。
作品が白と黒の空間にあると、マンションに帰ってきた人たちの疲れを癒してくれるような場所となり、非常にいい作品だと思います。
(小山 登美夫)

草花や木や蝶々などが、びっしり張り付いている作品で、それが陶器でつくられていることに驚きました。
見ても見ても見つくせないような、本当に自分が小さな世界の中に、取り込まれていってしまうような、見ることの楽しみを与えている作品です。
きっと住人の方も毎日違う面が見られて、癒される作品になると思いました。
(宮村 周子)

 

■ 最終設置作品

優秀賞



「Human sign」
大野 晴美(おおの はるみ) さん
女子美術大学大学院
美術研究科 美術専攻 立体芸術研究領域
■ 大野 晴美さんのコメント
この度は優秀賞を頂き、ありがとうございました。
今回、こうして受賞することが出来たのは自分一人の力ではなく周りの人達の支えがあってこそだと実感しています。
実制作の機会を頂き、耐久性についてや、エントランスの空間との兼ね合いなど、様々なことを考慮しての制作は初めてで、大変良い勉強となりました。
自分の制作に模索した時もあり、こうして評価を頂けたことは自信に繋がり、次の制作へと取り組む意欲を持続することができます。
この時の経験を忘れずに今後も励んでいきたいと思います。本当にありがとうございました。

■ 審査員コメント
大きな木に熱線のようなもので模様を焼き付け、時間を刻みこんでいく、その作業はすごい時間が重ねられているというところが面白かったです。
エントランス空間が黒と白という非常にかっこいい感じの空間に、木で作られた有機的な形が非常に合っていました。
技術的な問題として、木が割れるなどいろいろありましたがそれは今後の課題になると思います。
(小山 登美夫)

大きな木の固まりに電気ゴテのようなもので、細かい模様を焼き付けていますが、びっしり上から下まで全く異なる模様が刻まれていて、 本人がそれを緻密にずっと描いている姿が思い浮かんできました。憑りつかれたように引き込まれる、呪術的な怖さみたいなのを感じ、物体としての存在感がすごいなと感心しました。
近未来的な空間に負けないインパクトがありました。
(宮村 周子)


「表出」
安達 淳(あだち あつし)さん
武蔵野美術大学大学院
造形研究科 デザイン専攻 建築コース

 

■ 安達 淳さんのコメント
今回このような賞をいただきありがとうございます。 実制作中は、自分のふがいない部分が色々ありましたが、その中で感じたことやその時間はとても良い経験となりました。
また無事作品を発表できたのは、先生方や友人たち、沢山の人の協力があってのことです。
とても感謝しております。
今回の経験は、これからの制作活動の貴重な第一歩となると思います。
本当にありがとうございました。

■ 審査員コメント
一見タワーのようなで、表面は黒いが内側は本物の自然の木の面をかたどり、金箔が貼られた作品で、 まるで内側に自然があるようで、下からのライトで光を当てられると全体が出来上がる演出は非常に面白い作品でした。
エントランス空間にはまりすぎた感じがありましたが、非常に力強い作品でした。
これからも違うやり方を彼は発見していくだろうと思います。
あれだけの作品作るのはすごく大変だったと思います。ご苦労様でした。
(小山 登美夫)

一見トーテムポールみたいなものの中に木がキャスティングされて、キラキラ光った木の陰を穴の中から覗き見るような作品でした。 木が大きい立体の中に入り込んでいて、でもその木は実体がない。見えない黄金の木を見るという、逆転の発想が素晴らしいと思いました。
建築を学ばれていると聞いて、発想の豊かさや、こういうことも出来るんだいうことを気づかせてくれる面白い作品でした。
(宮村 周子)

プレゼンテーション・審査風景

AAC2013総評

■ 土屋 公雄 / 彫刻家、愛知県立芸術大学教授

今回初めて審査員長をやらせていただきました。
この話をいただいたときに、これまで審査員をされてこられた方のお名前を拝見して、日本の美術界のそうそうたる評論家の先生や、美術館の先生方で驚きました。
冒頭の服部社長のご挨拶の中で、「ライフワークとして建築の中にアートを入れていく」というお話を聞いて、非常に力強く、その言葉を受け止めさせていただきました。
日本にも1980年代までは、アートをパブリックな建築空間に設置する事はありました。
しかしそれは予算が余ったり、敷地に余分なスペースができ、その空間をうめるために何か植栽か彫刻作品を設置するものでした。
海外の場合「文化の1%」というシステムがあり、建設事業等の実施に際し、総工費の約1%~1.5%を芸術的・文化的用途にあてることを義務づける制度です。
フランスに「un pour cent」という言葉があり、「percent for art」という意味で、必ず公共の場にアートを設置しています。
80年代後半、経済が右肩上がりの日本も同じようにアートが設置されていくような期待もありましたが、バブルが崩壊し、結果「percent for art」は根付きませんでした。
日本にも美術を内側で支えるコレクターや美術関係者の方々は居ますが、日本には美術を外側から支える構造や制度がありません。
日々、美術大学で学生と向き合っていて、どんなに才能があっても、将来作家としてやっていけるかなという心配はいつもあります。
芸術家は作家活動をする上で、3つの大きな壁にぶつかります。
1つ目は、学校を卒業した後必ず経済という壁にぶつかります。
特に彫刻家は作品を作りたくてもアトリエも持てず、材料を買ったり、生活をしていくことと制作していく事との両立が非常に難しいのです。
それをなんとかクリアしても、次は歴史の壁にぶつかります。
我々アーティストは、オンリーワンでなくてはいけないのです。誰かと同じものを作っていても意味がありません。
歴史も含めてオリジナリティーがないとだめなのです。
そして3つ目の壁、それは孤独の壁です。アーティストは、いつも一人なのです。
それら3つの壁と戦いながらアーティストは作品を作っていくのです。
今回、プレゼンテーションをされた三人の方は、とっても魅力的な作品を制作してくれました。
彼らの作品はそれぞれにオリジナリティーに満ちたものであり、ただ学生ですから、技術や構造の点で詰めの甘いところはあります。
しかし今回この入賞を機会に、より多くの経験を積み重ね、クオリティの高いものに完成させていってください。
本日はみなさん、おめでとうございました。

最終審査結果発表
表彰式・授賞式 表彰式・授賞式 AAC2013
表彰式・授賞式 AACポスターコンペ2013 懇親会